以前にも取り上げた課題ではありますが、最近、任意売却の実務面で、市役所の「差押え解除」が特に厳しくなってきたと感じます。
また他方で、債権者も後順位の「差押え解除費用」をほとんど認めてくれない傾向にあります。
これは即ち「差押え」が入っている案件は、任意売却できる可能性が下がる事を意味します。
ただ、最近の「差押え解除」が厳しい原因の一つには、市役所の回収担当者のレベル低下が挙げられます。
勿論、市役所の対応が全て悪いとは言いません。税金を滞納したのは債務者(任意売却の売主)が悪いのです。
しかし、債務者は支払わなければならないのは分かっていますが、支払えないから滞納しているのが現実です。まずはこの前提をしっかり担当者に認識して頂きたいと同時に債務者の主張の主旨を理解して頂きたいと感じます。
まず差押えの解除交渉において当社(又は債務者)は、「法律に則れば1円も回収できない所を○万円で差押えを一旦解除し、それでも返し切れなかった債務については分割で返済させて下さい」という提案をしているに過ぎません。
しかし残念な事にレベルの低い担当者は、こちらの提案の「意味が理解できない」または「理解しようと努力しない」のです。
我々、任意売却専門業者が市役所へ解除交渉に行くと、担当者は概ね以下の二つの事をマニュアルの様に唱えます。
一つ目は「市役所は本税と延滞金の全額を支払って貰えれば解除します」です。
しかし、これは当然の事であって全額支払えば解除しない理由がありません。全額払えるならば市役所の了解など不要であり、敢えて市役所へ交渉に行くまでもなく、決済日に抹消書類をもって来てもらう手配を電話で行えば話は終わりです。そんな事を頼みに行っている訳ではありません。
二つ目は「法律に則って1円も回収できないなら仕方がない」です。
これはどういう事かというと、債務者が市役所の指示する金額を支払う事ができなければ任意売却は不調となり、通常、競売になってしまいます。
競売になれば、先順位の抵当権者ですら全額回収不能なのですから、当然、後順位の差押え権者である市役所には1円の配当も回りません。それでも競売であれば構わないと言っているのです。
しかし、回収担当者は市民のために少しでも多く税金を回収する事が最大の仕事であるはずです。こちらの提案を吟味する事なく簡単に拒否して「法律に則ってならば(競売になって)1円も回収できなくて良い」などと気安く言うのは、言語道断で仕事放棄と同じ事です。
回収担当者には、どうすれば少しでも多く回収できるのかを真剣に学んで頂き、交渉の場に出てきてもらいたいと切に願うばかりです。
任意売却は、債務者だけではなく債権者にとってもメリットのある取引なのですから。