任意売却と競売のメリット・デメリット

多くの銀行において、債務者は最初の滞納から6回がすぎてしまうと、今までの様に月々の分割返済ができなくなり、銀行から債務の一括返済を求められます。

銀行によっては6回以下でも一括返済を求めてくる場合もあります。

これを「期限の利益の喪失」といいます。

また銀行は、あなたからの回収をあきらめ、保証会社に対してあなたの代わりに債務を支払う様に請求手続きを取ります。この結果、債権者は銀行から保証会社へと移ります。

これを「保証会社の代位弁済」といいます。

 

ここまでくると基本的に選択肢は「任意売却」か「競売」しかありません。

債務者が置かれている状況によって「任意売却」と「競売」の何れが有利なのかを見極めなければなりません。

両者の特徴と債務者から見たそれぞれのメリット・デメリットをみてみましょう!

 

【競売の特徴】

競売で落札されれば、債務者の意思表示とは関係なく所有権が移ってしまう。所有権が落札者に代われば債務者はどのような状況であっても出て行かなければならない。

また、競売の申立てが認められ「競売開始決定」の登記がなされると、裁判所から執行官が来て、建物内外の写真撮影や居住状況の聴取が行われる。

更に、入札が始まる2週間程前の閲覧開始日以降は誰でもインターネットなどで写真や現況調査報告書を閲覧できる様になる。

 

【競売のメリット】

競売の申立てから落札まで、およそ6ヶ月あるので、その間は今の住居に住み続けられる。つまり、その間は家賃が発生しない。

 

【競売のデメリット】

競争入札なので一概にはいえないが、市場価格(相場)よりも安価で買い叩かれるため、相場で売るよりも債務が多く残ってしまう。

また、インターネットなどで自宅写真が公開されるため、近所や知り合いに競売の事実が分かってしまう可能性がある。

更に、競売開始決定以降は、不動産業者や金融業者から営業目的で大量のDMや自宅訪問があり、精神的ストレスを感じる。

 

 

【任意売却の特徴】

一般の取引と同様に、売買契約を締結して引渡し期日を定める。販売活動も通常の売買と同様であり、外見上、債務の返済が苦しくなった事は分からない。

但し、価格の決定権が債務者にはなく、債権者が指示した価格での取引が前提となるほか、債権者の抵当権抹消同意が得られなければ取引ができない。

また、任意売却の販売活動期間は3ヶ月~6ヶ月程度が一般的であり、その期間を経過しても買主が見つけられなければ競売となる。

 

【任意売却のメリット】

一般の取引と同様に買主は内覧も行えるため、競売よりも高く売却ができる可能性があり、債務をより多く減らす事ができる。

また、債権者との交渉によって、税金や管理費などの「滞納費用」、別の場所へ引越するための「引越費用」などの一部を住宅ローンの返済に優先して、債務者が受け取れる場合がある。

この費用を捻出し債務者がスムーズに再出発できる様にする事が任意売却最大の目的である。

 

【任意売却のデメリット】

買主が見つかると引越しをしなければならず、すぐに見つかった場合には、その分早く、家賃負担が発生する。

 

 

債権者は、常に「競売」と「任意売却」で何れの方が自身の回収を多くできるかシビアに判断しています。

任意売却で債務者に対して「引越費用」や「滞納費用」を認めてくれるのは、債権者の温情ではなく、それを支払ったとしても、競売より多くの回収ができると判断しているためです。

逆に、債務者も債権者と同様に全ての流れを知り、自己の判断能力を高め、「競売」と「任意売却」何れの選択肢が自身にとって有利なのか、また再出発に適しているのかを判断しなければなりません。

 

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